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ショックの為に、命の思考回路がまともな言葉を発したのは、これが最後だった。
「雪之絵 命が来たか?じゃ、こいつは、もういいや。」 皇金が右腕を振り上げる。
子供でも分かるような大振りの一撃。 しかし、高森は、まったく反応を見せる事なく側頭部を殴られた。
立っている時から、気絶していた事を思わせる高森の姿。 風車の様にその場で回転し、床に倒れる。
倒れた高森の姿は、糸の切れたマリオネットの様。 命の辛うじて残っている理性が、そう思おうとしたが、実際はそんな優しい物ではない。
まるで、車に轢かれて血反吐にまみれるタヌキだった。
「命ぉ...」
だんだん、自分の意識が別の物になって行くような感覚を起こしていた命は、小さな呼び声だったにもかかわらず、全身を震わせて反応する。
「ヒドイでしょ?さっきから、私の事、好きにしていいから高森殴らないでって言ってるのに、全然聞いてくれないの...」