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勝負は、瞬きをする間もなく決してしまった。
陸刀アケミは、自分が今の今まで雪之絵真紀に”生かされていた”事を、絶望的な死への恐怖と共に思い知った。
「アケミを一番に殺しちゃうと、他の陸刀のヒットマン全部逃げちゃうからね。」
言いながら、雪之絵真紀は、もう一本の腕もアケミの首に回す。 緩慢な動きでも、陸刀アケミの方には、既になす術がない。
覚悟するしかなかった。 ニワトリの様に、首を捻られて死ぬのを大人しく待つだけだ。
周りで絶命している陸刀のヒットマンは、皆、血だるまになって転がっている。 同じ死ぬなら、首を捻られた方が綺麗に死ねるだろう。
「感謝してね?鳳仙のあの男から、髪型すらも私の真似をする事を強要されていたのでしょう?」
誰も、陸刀アケミ以外は、誰も解るはずのない言葉。
そんな言葉を、何より雪之絵真紀自身から聞いた事に対し、陸刀アケミは驚愕した。
「アンタ...何で知ってるの? 私の事どこまで知ってるのよ...」
アケミは、死への恐怖に脅えながらも、どうしても聞きたかった。
「全部、知ってるわよ? アケミが死んだ後、京次にその事を話しても良い?」
相変わらず、静かな雪之絵真紀の言葉。 しかし、陸刀アケミはその言葉に、完全に我を忘れた。
いや、忘れた訳ではない。 雪之絵真紀の言葉の内容が、死よりも遥かに恐怖だっただけだ。
「嫌!! 京ちゃんは私の事を、男を手玉に取る魔性の女だと思っているのよ!?
だから、私が『汚れてても』許してくれてるの!!
それが、実は鳳仙の奴隷でしかない。なんて、知られたい訳ないじゃない!!」
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そう言えば、昔、自分も似たような事をしたな。と、雪之絵真紀は思い出す。
かつて、一般的な女の子に成長した事を装い、皆月京次に言い寄ったあの時。
結局、振られた挙げ句に、狂暴な正体もバレてしまったが、もしも、思惑通り、京次と付き合えていたら。 やはり、アケミ同様、自分の付いた嘘がバレるのを、何より恐れるだろう。
京次の怒りを買い、嫌われるならまだしも、嘘吐き呼ばわりされて忌み嫌われ蔑まされるのは、雪之絵真紀ですら堪えられない。
「まあいいわ。京次には、何も言わないでおいて上げる。」