リ
「く...、ふふ、あはははははっ!」
嘔吐が終わった後も、口を押さえて蹲っていたエデン母が、突然肩を揺らして笑いはじめた。
モニターを通して彼女を見ていた全員が、狂ってしまったのではないかと思ったであろうその様子。
「ははは、はあぁーーぁ...、」
しばらく人目も憚らず笑い続けていたが、そのうち笑いのトーンが下がり、笑い声が途切れると同時に上半身を起こした。
今だ両足の効かないエデン母だが、上げた顔には、見ている者の予想に反して、いやにサバサバした表情が浮かんでいた。
「色々用意してきたんですけどねー。 どれもあなたには通用しそうにありませんわ。」
そう明るい口調で言った後、何かを投げ捨てる。
捨てられて廊下に散らばるそれは、ビー玉サイズの黒い鉄球や、辛うじて見えるピアノ線。 それに、緑色の毒が塗られた付け爪も含まれていた。
。皆月京次の、本当の力を体感しても、
常時装備の毒の爪を初め、全ての装備が通用しないと解っても、それでも、揺るぎ無い勝利への自信を持たせる代物。
1mlのちっぽけな注射器。
「私は、毒のエキスパートなんて思われていますが、元々は薬剤師なんですのよ。」
そう、子供のエデンマルキーニは、白衣を着て薬を作る母親を医者だと思っていたが、エデン母は、昔は有能な薬剤師であった。 今はよく使う数種類の毒も、薬の副産物に過ぎない。
「私のダンナ様は、その昔、超有名なSPだったんですの。 それで、その仕事の役に立つようにと、この薬を作ろうとしたんです。」
「でも、まだ改善の余地のあり過ぎる、試作品の段階で...」
「ですが!薬が効いてる五秒間だけは、天下無敵ですわ!!」