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クレイモア

屑男 撲滅抹殺委員会!

−前へ歩く−

 遠巻きに見ていた、二人の攻防。 一方的に加渓がやられたのを目の当たりにして、カズ子が青くなる。

「そ、そんな、」

 雪之絵の蹴りに、カズ子の手前まで飛ばされた加渓が尻餅をついた。 続いて、加渓の手から離れて宙を舞っていた斬馬刀が、アスファルトに突き立った。

 「...防御の基礎だけは、できてるみたいね。」

 雪之絵から受けた攻撃の二発とも、加渓は、自ら後ろに飛んで威力を逃していた。

 そうでなければ、いくら加渓がタフとはいえ、雪之絵の攻撃を食らって無事でいられるはずがない。

 基本的に、陸刀加渓の動きをコントロールしているのは鳳仙桐子だ。 ゲームのキャラクターを操るプレイヤーぐらいに思ってくれればよい。

 最近やっと加渓を操れるようになったカズ子は、防御全般と一部攻撃方法しか練習する時間がなかったのである。

「で、でも、加渓が負けるはずはありません!それは歴史が証明しているんです!!」

 そう叫んだカズ子だったが、雪之絵真紀からすれば今の自分が圧倒的優位なのは至極当然だった。 それこそ、歴史が証明していると言っていい。

雪之絵の女達は、代々、自分の日記を娘に残していた。

 別に自分の母親の書き物になど興味の無かった雪之絵真紀は、最近になって、やっとその日記を読んだのだが、そこには『黒い瞳』など、重要な記載がされていた。

 娘を想う雪之絵の女達が、自分の出来る範囲で娘の呪いを解く方法を調べ、子孫に残そうと書き記して行ったのだろうが、この際それは置いておくとして、その日記には、鳳仙と陸刀の戦士の事も書かれていた。

 雪之絵の女達は、雪之絵真紀以外の全員が成人を迎える前に殺されている。 そんな小娘相手に、鳳仙と陸刀のコンビは、常に十年以上戦闘の修練をつんだベテランの戦士で挑んだのだ。

 勿論、十代の雪之絵の女達に、現在の雪之絵真紀程に完成された戦士などいるはずがなく、又、過去の鳳仙と陸刀の戦士が、桐子と加渓のように戦闘の素人であるばずも無いのだ。

 鳳仙と陸刀は、幼い娘を殺してきた事実を、同じ幼い娘だったアケミやカズ子には、正確に伝えなかったのだろう。

 この事を伝えてやれば、意固地になっているカズ子の目も覚めるのだろうが、雪之絵真紀はそんな気は更々無い。

「命が心配だわ。 さっさと死んで頂戴。」

 言葉の内容よりも、武器を奪われたことにたじろいだカズ子だったが、巨大斬馬刀は、持ち上げるだけでも、重量挙げのメダリスト程の力が必要だ。

 雪之絵真紀の腕で、加渓のように斬馬刀を振り回すのは不可能である。

「加渓、取り返せ!!」

 カズ子の叫びに、しゃがんでいた加渓は、そのまま低い体勢で雪之絵真紀にダッシュした。

「ふん、」


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