「...さて、どっちが勝ちますかね。」
テレビ画面を見つめる『白い死神』が、我関せずの落ち着き払った口調で呟いた。
雪之絵御緒史も見つめる巨大なワイド画面には、『竜王』と『雀将』の二人に歩み寄る、皆月京次が映っていた。
「キミは、何故、鳳仙圭が、あんなに歪んだ性格になってしまったのか、知っていたかね?」
白い死神の問い掛けを聞いていなかったのか、御緒史が突然そんな事を言う。
顎を下に両手の拳をおいて、微動だにしない御緒史は、白い死神にも負けず落ち着き払っている。 表情を見る限り、それは強がりではない。
「いいえ? 興味ありませんし。 でも、どうせ大した理由でもないのでしょう?」
「その通りだ。実にちっぽけな理由だったよ。 所詮、鳳仙圭の痛みは、自分自身が受けた傷でしかないのだからな。」
嘲笑しながら答えた白い死神に対し、御緒史の口元も、この時だけは綻んでいた。
「男の立場で言わせてもらおう。」
「男にとって、自分自身が受けた傷など、物の数ではない。」
『ありとあらゆる格闘技世界大会を、若干、十七歳で総なめにした天才格闘家、『雀将』。』
『まだ成人式も迎えていない若者だが、このまま成長すれば、師の『竜王』はおろか、『白い死神』をも超えられると言われている逸材だ。』