「姉さん!止めろって言ってるだろ!
そいつを殺さなければ、親父は助かるかも知れないんだ!!」
「...ちっ!」
「あんた、そいつに対する憎しみと、親父に対する愛情と、どっちが大きいんだ!?」
「本当に、パパ助かる?」
「可能性は、ある。」
命は、鳳仙圭の髪の毛を掴み、貴時の所へ向かって歩き出した。 ダラリと力の抜けた鳳仙圭を引き摺りながら、早足で進む。
そして、貴時の目の前までたどり着いた時、命は、ぼんやりとした口調で呟いた。
「...なんで、カズ子とタケ子が、ここに居るの?」
「!」
その言葉と同時に、桐子の体が見て解るほどに震えた。
勿論桐子も、この場所に来ようと決心した時点で、命に自分の正体を知られるのを覚悟したのであろうが、それが現実となれば、脅えずにはいられなかった。
下を向いたまま、顔を上げる事も出来ずにいる。
「...それは、後で本人に聞きな。 今は一刻を争うんだ。」
少しの間だけ桐子を見ていた命だったが、貴時の言葉にコクリと頷いて見せると、投げ捨てるように鳳仙圭を放った。
貴時の足元に転がった鳳仙圭は、意識はあるらしく、朦朧としながらも怯えた目で貴時を見上る。
「今言った様に一刻を争う。」
「......」
鳳仙圭は、自分の水晶玉を左手で握り締め、右手を皆月京次の傷口に向けた。