「...蘇生治療を開始して、どれぐらい経つ?」
「まだ五分も経っていませんわ。」
貴時がイラつきながら、既に何度目かの質問を口にすると、エデン母が律儀にそれに答えた。
現在、治療を受けている京次に、なんら変化は無い。 それに比べ、輸血をしている命は、顔色を悪くし、貴時に背中を支えられている状態。 傷の治療に当たっている桐子も、これまで呪術を使いすぎたのが原因で、表情から疲労が見て取れた。
この中で蘇生に一番必要と思われるエデン父も、こちらは初めから何時死んでもおかしくない。 貴時の焦りは無理もなく、ここにいる全員が同じく感じている焦りである。
「ちっ、雪之絵真紀がどれぐらい時間を稼いでくれるか...」
「実際、雪之絵真紀は、戦おうとせずに、逃げ回ってくれた方が、時間稼ぎになると思うんだがな。」
「...確かに、白い死神と戦って勝てるとは到底思えませんが、」
「でも雪之絵真紀さんは、あなたが思っているより、遥かにお強いですわよ?」
「あなたは、皆月京次さんの方が圧倒的に強いと思っておられるようですが、お二人にあるのは実力の違いではなく、”質の違い”。」
。
。
「私は、真正面からシンプルに攻撃して来るタイプが苦手なので、京次さんには一方的に負けてしまいましたが...それ以前に、私と戦った時の雪之絵さんは疲労のピークで、戦いに集中できない理由も幾つかありましたからね。」
「娘さんが囚われて、阻む者を全て除外しようと集中していた京次さんとは、条件が違い過ぎますわ。」
「京次さんと雪之絵さんが戦っても、”若干、京次さんが強い”というレベル。」