あの一件から、一週間がたった。
今、俺は町中にある病院に入院している。噛み切った舌を縫い付けられ、食べる事はおろか、しゃべる事も禁止されている状態だが、そのうち元どうりになるらしい。
出血の方も輸血するほどではないらしく、自然に正常な血の量になるのを待つらしい。この入院はそのためでもある。
そして入院中、俺の横にはいつも詩女がいる。
「ん?リンゴほしいの?でも食べれないのよね、私、食べるから。」
...く、 こんな詩女だが、こいつには本当に頭が下がる。
俺が寝込んでいたために、今回の一件の事情聴取は、詩女と君寧明人達がほとんどやってくれたのだ。
恥ずかしい話もしなくてはいけなかっただろうに、それでも詩女は俺の横で笑ってくれている。
本当に頭が下がる。
そうそう、君寧明人だが、あれはそんなに悪い奴じゃなかったらしい。と言うか話てみると、かなりイイ奴だった。
俺の命の恩人であると言っても過言でなく、わざわざ見舞いにも毎日やって来て、しやべれない俺に対し、色々な話題を提供してくれる。
もしかしたら、いつか親友になれるかもしれないと密かに思っていたりもする。
そして、元凶の雪之絵だが、警察に捕まったそうだ。
ま、当たり前か。この先どんな沙汰が下るか知らないが、できれば二度と俺達の前に現れてほしくないものだ。
「そろそろ、君寧先輩達来る時間だね。」
ここ最近、ずっとサボリで学校に行っていない詩女が腕時計を見ている。
時間は四時半、
君寧明人と他二人は、学校が終わった後、いつもこの時間にやって来る。
そろそろ、
コン、コン、
やっぱりだ。ノックの音が聞こえた、...ん?少し、
ドアが開く。そこには一人の男が立っていた。別におかしい事は無い、君寧明人の舎弟の一人”タケオ”だ。
でも、ノックの音を聞いた時に感じたとおり、タケオに元気が感じられない。
「タケオさん、いらっしゃい、今日は一人?」
しゃべれない俺の代わりに、詩女が声をかける。
タケオは瞬き一つせず、こっちを見つめている。心なしか...いや、間違いなく顔色が悪い。
「...どうかしたの?」
俺同様、不審に思ったのか、幾分、声のトーンを落とした詩女が問い掛ける。
.......
「.....れた、」
「....え?」
「ころされた、」
......え?
「殺された、」
一つ一つの音が零れ落ちる様につむいだ言葉、
俺と詩女は、顔を見合わせた後、みっともなく苦笑を浮かべた。
「何言ってるの?よく分からないよ、」
冗談にしては悪質、しかし、冗談である事を思い、浮かべた苦笑いを俺達は、すぐに崩す事となる。
タケオの表情が、それほど真面目だったから。それほど顔が、恐怖の色に染まっていたからだ。
「...雪之絵、」
....!
「雪之絵真紀が、脱走して、...包丁で明人サン刺して、」
俺は弾かれた様に飛び起きた。
「京次!?」
あわてて詩女が俺の腕を掴む。
「な、何するつもり!?」
「知れた事よ!雪之絵を探す!!」
しゃべるのは御法度だが、かまっちゃいられない、それどころじゃ絶対にない。
「無茶よ!!血液だって、後、一ヶ月しないと元の量に戻らないって言われたじゃない!!」
「言ってる場合じゃねえの、分かるだろ!?早くあいつ見つけないと!!...」
ま
え?
俺と詩女の動きが止まる。
....いるんだよ、ここに、
いるんだよ、俺の後ろに、
の
ま
の
「助けてくれよお!!俺まだ死にたくねえよお!!!」
れり
り
れ
れ
れ
け
マ
ニののの 「ゲ」
むむむ
むむ
むむ
むむ
むむむ