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アケミがぶーたれるのを宥めた後、俺は店を出た。
元々、明人に会いに来ただけで、アケミには悪いが遊ぶつもりはなかったのだ。
昼間から騒がしい繁華街の呼び込みを躱しながら、俺は明人の言葉を思い出す。
『 命ちゃん、お前に対し、怒った事とかあるか?』
『となれば、当然、お前も命ちゃんに怒った事も無いんだろ?』
『喧嘩もした事もないんじゃ、本当の親子とは言えねえよ。』
雪之絵真紀は行方不明。雪之絵の実家は、命の存在を認めていない。 今、俺の所から出る事になったら、命は施設に入るしかないのだ。
それは、やはり辛いに決まっている。詩女でさえ、無理に俺を命から引き離そうとはしない。裁判沙汰にすれば、詩女はきっと勝てる。 しかし、そこまで鬼にはなれないのだろう。
命は、俺に嫌われたら、一人ぼっちになってしまう。 そう思っている。
ふむ。
俺は誰とも無く、自分自身に呟いて、帰路についた。