クレイモア SSS

屑男・撲滅委員会!

 アケミがぶーたれるのを宥めた後、俺は店を出た。

 元々、明人に会いに来ただけで、アケミには悪いが遊ぶつもりはなかったのだ。

 昼間から騒がしい繁華街の呼び込みを躱しながら、俺は明人の言葉を思い出す。

『 命ちゃん、お前に対し、怒った事とかあるか?』

 ない。

前の詩女との一件でも、命は俺に何か言いたいのを我慢して、詩女に突っかかって行った。

『となれば、当然、お前も命ちゃんに怒った事も無いんだろ?』

 ない。

命は、つねに俺の顔色を覗っている気がする。 甘えて来るにしても、節度を命自身が決めている。

『喧嘩もした事もないんじゃ、本当の親子とは言えねえよ。』

 もっともだ。 わざわざ喧嘩しようとは思わないが、もっと命には本音を話してほしいと思う。

 父親として。

 命が素直になれない理由など分かっている。

 明人の言うように、命は俺の所以外に居る場所がないからだ。

 雪之絵真紀は行方不明。雪之絵の実家は、命の存在を認めていない。 今、俺の所から出る事になったら、命は施設に入るしかないのだ。

 それは、やはり辛いに決まっている。詩女でさえ、無理に俺を命から引き離そうとはしない。裁判沙汰にすれば、詩女はきっと勝てる。 しかし、そこまで鬼にはなれないのだろう。

 命は、俺に嫌われたら、一人ぼっちになってしまう。 そう思っている。

 ふむ。

 俺は誰とも無く、自分自身に呟いて、帰路についた。


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