り
「僕に限らず、誰かと組み手をする時はそうでもないのですが、一人で稽古をしている時など、正に”死にもの狂い”と言った形相で稽古しています。 まるで見えない敵と戦っているみたいに。」
探るように命を見つめながら高森は告白したが、命の方は高森を見据えたまま、何も答えなかった。
だが、京次がそこまでして強くなろうとしている理由。 そんな物は分かっている。
命とその母、雪之絵 真紀を引き離した敵と、いつしか対峙するため。
つまりは、
命の口元が嬉しそうに緩むのを見た高森は、何も答えてくれそうにないと知り、自分の話を続ける。
「僕は女の人に興味ありませんし、京次さんを好きかと言われれば、それも否定しません。 しかし、そんな風に思われても京次さんは迷惑なだけでしょう。
「そっ、それはダメ!パパの背中は私が守るの!」
「あれ?京次さん言ってましたよ?襲われるから命に背中は向けられないって。」
ぐっ。身に覚えがあるため、文字通りぐうの音も出ない。
「よって....」
「絶対!!命さんと京次さんをねんごろになんて、させません!!」
「なっ何でーーーっ!?て、そりゃーオメーの嫉妬じゃねーか!?」
「...もし、命さんの姦計に嵌まってそんな関係になったら、後で京次さんどんなに後悔するやら、
「やっぱり嫉妬じゃないかーーっ!!奇麗事さんざん言っておいて結局それかーーっ!!」
「いいえっ、大体、京次さんの敵って、命さんのお母さんなんでしょ!?母娘そろって京次さん困らせるのおやめなさい!」
「とにかく!!僕は、どんな事柄からも京次さんを守ると決めたのです!!京次さんに一生付いて行くと決めたのです!!」
「ざけんなーーっ!!ボケッ!!私は体が女だから、パパがその気になりゃ受入れられんのよ!!男のお前なんかに負けるかーーーーーーーっ!!!」
この時の、命の怒鳴り声は、山彦となって駆け巡った。
それを眺めるは、生える草木、道を行く野良犬、照らす太陽、集まって来る近所の人達、