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姿勢を正したまま、腰を落とす。
握った拳を、皇金に向ける。
そして何より、全神経を皇金にのみ向けて。”それ以外”の物を遮断する。
「...高森君、一つ聞いておきたいのだが?」
「何です?」
「キミも、強くなるために”必死”になったクチかい?」
皇金が妙な事を口走る。その真意は高森には分からなかったが、答えは決まっていた。
「勿論です。 僕には、それだけの理由がありましたから。」
少なくとも、高森は修行を怠けた事は一度もない。 尊敬する恩人である皆月 京次に対し、少しでも力になろうと、強くなる努力は欠かす事はなかった。
「そうかー、やっぱりキミもそう言うか。 でもなぁ...」
高森の言葉に「うん、うん、」と肯いていた皇金が顔を上げる。
何時殴られたのかも分からず、ただ、なるがままにすっ飛ばされ、受け身も取れずに床を転がった。
この間、机や椅子をなぎ倒す。 その姿は、さながらボーリングの様だ。
「やっぱりな、お前さんの公開エッチも時間の問題だな。」
「あの様子じゃ、雪之絵 命が来るまで絶対に立っていられないよ。」
飛ばされた高森は、しこたま壁に頭を打ち付けて止まった後、ふらつきながら立ち上がろうとするが、うまく行かずに、カベに手を付いて体を支える。
顔面血だらけなのは、歯を折られたのと鼻血の両方だ。
既に、この時点で、誰が見ても決定的なダメージに見えた。
タケ子を捕まえて、相変わらず体を弄っている太郎が、皇金の様子を眺めながら、少々つまらなそうに呟いく。
「....よかったなお前さん。 どうやら、公開エッチにはなりそうもなくて。」
「どっ、どう言う事よっ。」 太郎の責めに対し、ただ嫌悪感のみを感じているタケ子が聞き返す。
高森の様子を見る限り、自分も絶望的だと思ったばかりだ。この喜ばしい言葉には、裏があるとしか思えない。
「皇金の様子じゃ、雪之絵 命が来るまで、あの男をなぶり続けるぜ。 俺としては、さっさと終わらせてほしいが、皇金に意見なんぞしたら、俺が代りに殺されるからな。