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「パパっ見た!?アイツ変だよっ!!手が変な所からニョキって!!!」
京次の腕にぶら下がったまま、命が暴れる。
「だから落ち着けって、命。」
「京次さん、僕にも腕が伸びるの見えましたけど...」
高森が、京次から預かった黒いコートを握り締めながら震えている。 まるっきり幽霊でも見た様な目だ。
京次は苦笑しながら命をおろして、サラメロウを見つめた。
「だってよ?命と高森が不思議がってるぜ。 早く、正体表しな。」
まったく想像していなかった、もう一人のヒットマンの出現の仕方に、命と高森が、息を飲む。
「マントの中に隠れていたんですか?信じられません...」
「まーな、体の間接を外して、巻き付いていたって感じだろうな。」
この中で、京次だけが、物事に冷静な判断を下している。
「小判ザメ、本当にピッタリの名前ですね。」
「ホント、顔がサメにそっくり。」
高森が言いたかったのは勿論全然違うのだが、命の言う事も解るので、誰もツッコミは入れない。
「それより京次さん。手、折れましたか?」
「ああ、そのようだな。」
高森が京次の手を取ってみると、手の甲が赤く腫れ上がっていた。
命がそれを見て青くなる。
命を守る為に、サラメロウの一撃を受け止めたのが原因だ。 コンクリートを打ち抜く程のサラメロウの一撃、さしもの京次の手も持たなかったのだ。
「パパっ、ゴメンっ!!ゴメンね!?」
明らかに京次の怪我は、命のせいだ。 命は、まるで子供に戻ったかのように取り乱す。
京次は、苦笑しながら命の頭をなでた。
「気にするな。 娘の為に怪我をするのは、結構嬉しいものなんだぞ?」
京次が命の頭を撫でるのは随分久しぶりで、命も懐かしそうに、なされるがままになっていた。