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屑男 撲滅委員会!

−ブラック・アイズ−

 それは一瞬の出来事で、カズ子には対処しきれなかった。

 動体から離れた首が床に転がる。

「わーホントに凄いねーっ。 お兄ちゃんより強いなんて、そうはいないよ?」

 今の間に、加渓から避難してカーテンの側に立つマルキーニが笑う。

「でもまあ、負ける事はないけどね。」

 今更だが、理解した。 この子は、廊下で初めて見たずっと以前から、死人だったのだ。 

「お兄ちゃん、子供とは思えないぐらい強いんだよ? 一回死んだのを私が生き返らせたら、とっても強くなったの!」

 まるで自分の手柄であるかの様に、胸を張って見せる。

 確かに、『エデン兄』の動きは前の二体とは比べ物にならない滑らかで、強力だった。

 その辺りの理由は、カズ子にも想像出来る。

 マルキーニに取っては、他人よりも双子の兄の方が動かしやすいのは当然。これが滑らかな動きの理由。

 また、死体の力が強力であるのも、エデンの電気が原因である。

 人間は、脳から出される電気信号の強さによって、発揮される筋肉の強さが決まる。

 普段、筋肉が三十パーセントの力しか使っていないのは有名な話であるが。 エデンの強力な静電気は、常に筋肉に全力の力を発生させるのだ。

 考えてみたら、エデンの双子は、鳳仙桐子と陸刀加渓の関係によく似ている。 お互い操り、操られ、そして加渓も、操られている時は筋肉のリミッターは外れてパワー全開である。

 しかし、エデンの双子に負けるはずはない。 エデンの兄と加渓では、あまりに素材が違う。

 元々陸刀家は、力だけは雪之絵血統以上だ。 その陸刀家歴史上最強の加渓が、百パーセントの力を発揮すればその実力は計り知れない。

 間違っても、エデンの双子ごときに後れは取らないと、カズ子は思う。

「あれ? もしかして私達に勝てるとか思ってる?」

「それは、無理だと思うなぁ。」


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