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黙り込んだエデン母の顔を、探るように見つめる。
「死亡率70%の確率には、勝利したようだな。」
「お蔭様で。」
元々、薬の実験は、体重20kg以下の小動物にしか行っていない。 それよりは重いエデン母の死亡率は、もう少し下がったのだ。 しかし、100%もの確率がある障害は別だ。
エデン母は、自分の心臓に視線を落とした。
「言っておくが、次に俺の前に現れた時は本当に殺すぜ? 俺が命を助け出すまでの間、そこで寝てやがれ。」
「お待ち下さいな。」
コートを翻し、自分が開けた穴から廊下に戻ろうとする京次に対し、エデン母は後ろから呼び止めた。
「折角ですので、私の話を聞いていって下さいませんか?」
「...そんな暇は無い。」
歩みを止めるどころか振り向きもしない京次に、負けることなく更に声を掛ける。
足を止めた京次が、背中ごしに、鋭い視線を向けた。
脅しの入った視線だが、京次が手負いの女を拷問するような男では無いと分かっているエデン母は、涼しい顔で受け流した。
「鳳仙屋敷は、本当に広いですからね。 その中にある部屋を全部一つづつ探すよりは、私の話に付き合った方が、結果的には時間短縮になると思いますわよ?」
命の居場所は、京次が何より知りたい情報である。
しばらく考え込んだ京次だったが、選択は決まっていた。
「いいだろう。 グチを聞いてやる。」
ニコリと笑って全身の力を抜いたエデン母。
「...そうして下さいな。 あなただって、私の娘と戦いたくはないでしょう?」
この先、京次が、そのまま廊下を進んだとしたら、命を探す為に、マルキーニのいる部屋の扉も蹴破る事になる。
エデン母は、どうしても、京次とマルキーニの接触を避けたかったのだ。
「少しの間だけでしたが、あなたとお話してよく解りましたわ。 同じく娘を守ろうとして戦ったのに、何故こんなにまで差が付いたのか。」
「......」
「あなたは頑張り次第で命ちゃんを助けられる可能性がある。 でも、私には、どんなに頑張っても、マルキーニを助けられる可能性は無い。」
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「...前置きはいい。 とっとと話せ。」
娘の事となれば、決して他人事ではない京次が、本気で聞く気になって話をせかすと、エデン母は自虐的な笑みを浮かべた後、ゆっくりと喋り出した。
「そうですわね、それじゃ聞いて下さいな。」
「私と、死んでしまった息子と、それから...」
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