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高森夕矢は、赤い髪の少女を、背中で押すようにして、エデン父の攻撃範囲から離脱した。
元の場所である玄関まで下がった所で、ガクリと膝を付く。
エデン父から離れられた安堵感の為に、思わず力が抜けたからなのだが、 正直、貴時の援護と、特に『下がれ』の言葉がなければ危なかった。
言葉に反応し、言葉に従がったからこそ、高森は無傷で逃れられたのだ。
「私の事なんて気にしないで攻撃していれば!!」
「いや、これでいいんだ。」
「生きてましたか、良かった。」
そう言った高森の言葉は本心。 しかし、何時倒れてもしかたがないダメージを負った皇金の姿を見て、落胆は隠せなかった。
「ああ...」
そう、何とか口から絞り出した所で、崩れるように腰を落とした。 辛そうに胡座をかいた皇金の後ろには、被り物をへしゃけさせた小人のヒットマンが倒れている。
死んでいるのは確認するまでもあるまい。
「...万事休すですかね。」
全員同時に、エデンの父親に顔を向ける。
相変わらず、こちらに向かってくる様子は無い。
何故、攻めて来ないのかは、現時点では不明だが、戦法上は間違っていない。
元SPである彼は、攻撃力よりも、寧ろ守備力に長けている。 それに戦闘において、隙というものは、攻撃の最中の一瞬にこそ有る。
空手家である高森にはよく解る。 受けに徹するエデン父に、死角は無い。
「!?」