]
「高森 夕矢 くん?」
「...」
「名前、高森夕矢くん。 ...うん覚えた。」
そう言って、笑う。
「私の名前、聞いてくれる?」
探るように顔を覗きこんだ、赤い髪の少女。 だが、高森は答えない。 それどころではない。この女の子を救う方法を考えている。
赤い髪の少女は、そんな高森を見つめたまま達観した表情で歩き出す。 誰も動かず、物音も立てず、そんな中、彼女の足音だけが響く。
その足音が、高森の横に並んだ時、再び同じ言葉を口にした。
「...私の名前、聞いてくれる?」
「そうだな、自己紹介もまだだったな。 最後に、自分の名前ぐらい聞いてもらえ。」
皇金の言葉に、赤い髪の少女は困りながらの笑顔を向けた。
自分の名前を聞いて欲しい相手は、何も高森夕矢だけではない。
ま
あの日、赤い髪の少女は、他の陸刀の仲間たちに、自分の前を聞いてもらおうと話し掛けた。
その後、兄の言う通り、仲間達が名前を聞いてくれるのを待ち続けていたが、仲間達は初めから『名前』の話を覚えてはいなかった。
何時しか彼女は、仲間達は自分の新しい名前に興味が無いのだと理解した。