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クレイモア

屑男 撲滅抹殺委員会!

−前へ歩く−

「高森 夕矢 くん?」

「...」

「名前、高森夕矢くん。 ...うん覚えた。」

 そう言って、笑う。

「私の名前、聞いてくれる?」

 探るように顔を覗きこんだ、赤い髪の少女。 だが、高森は答えない。 それどころではない。この女の子を救う方法を考えている。

 考えなくてはならない。正直、それ以外の事柄にかまっている暇は無い。

 赤い髪の少女は、そんな高森を見つめたまま達観した表情で歩き出す。 誰も動かず、物音も立てず、そんな中、彼女の足音だけが響く。

 その足音が、高森の横に並んだ時、再び同じ言葉を口にした。

「...私の名前、聞いてくれる?」

「そうだな、自己紹介もまだだったな。 最後に、自分の名前ぐらい聞いてもらえ。」

 皇金の言葉に、赤い髪の少女は困りながらの笑顔を向けた。

 自分の名前を聞いて欲しい相手は、何も高森夕矢だけではない。 


『待て待て、他人が付けた名前で良いのなら、俺が名付けてやるよ。』

『それでも、いいんだろ?』

良いに決まっている。 大切な人から貰った新しい名前

 あの日、赤い髪の少女は、他の陸刀の仲間たちに、自分の前を聞いてもらおうと話し掛けた。

 

しかし、今は、実力者の朱吏陽紅が抜けて、体制を整えなければならない忙しい時。

誰も、まともに取り合わなかった。

『みんな、お仕事で忙しいんだよ。』

『 会議が終わったら、今度は向こうから聞いて来るさ。』

 その後、兄の言う通り、仲間達が名前を聞いてくれるのを待ち続けていたが、仲間達は初めから『名前』の話を覚えてはいなかった。

 何時しか彼女は、仲間達は自分の新しい名前に興味が無いのだと理解した。


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