マルキーニの電気により、どんなに強くなろうと、エデン双子兄の本体はただの子供である。
高森夕矢の渾身の一撃に、体中の骨は完全に粉砕された。
両腕両足は当然として、指先さえも捩じれ折れ曲がり、首は手元を離れ転がった。
ゴミ処理場に打ち捨てられたマネキンを彷彿させるその姿。 あえて、マルキーニの言葉を借りるならば、これこそが「コナゴナ」である。
元医者だというエデンの母親。 しかし、治癒能力の無い死体の複雑に砕かれた骨を、どうやって治すというのだろう。
「...よく気がついたな。 たいしたものだ。」
命を救われた皇金がお礼の代わりに、もう二度と動く事は無い双子の男の子を見ながらそう言うと、高森夕矢は謙遜ではなく頭を振った。
死体の臓物が抜かれているのは気が付いていたが、その体の空洞の中に潜んでいるなど、高森夕矢も思いもよらなかった。
そう、これは、丁度その時、小判ザメの事を思い出していた為の偶然。
そんな高森と皇金のやり取りを、微笑を浮かべて見ていた朱吏陽紅は、視線をある場所に向けて、再び表情を引き締める。
それは、今しがたマルキーニ操る屍に殺された、陸刀ヒットマンの亡骸。
そして、今これまでに自分達が倒した、元陸刀ヒットマンの亡骸達。
朱吏陽紅だけではない、味方達全員が見ている。
「...殺したくはない。殺したくはないが...」