......
「俺と雪之絵の問題だ、お前には関係ない。」
ちょっと、まって、
なに?それ、
雪之絵真紀は、京次の事を好きだと言って殺そうとしている。
京次は私の事を好きだと言って、死のうとしている。
それで、なに?私は一体何?
雪之絵真紀、包丁片手に暴れているあなたが京次の事を好き?はん!!笑わせるんじゃないわ、今のあんたに誰かを好きだなんて言える資格があるもんですか!
京次、あなただってそうよ。私の事が好き?雪之絵が現れて、切羽詰まって私に助けを求めただけじゃない!今まで私の気持ち知ってて、気付かないフリしていたあなたが今さら何を言うの!!
男を昆虫採集のムシぐらいにしか思っていないあんたに。 私を嫌いな女から逃れるための切っ掛けぐらいにしか思っていないあなたが、私よりも上だとか思ってるワケ!?
冗談じゃないわ!!ナメんじゃないわよ!!私はずうっと前から京次の事好きだったのよ!!この感情は、あんた達のなんかより遥かに大きいに決まってるじゃない!!!!
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私は京次を突き飛ばした、両手で思いっきり。
その勢いで私自身も数メートル後ろに下がったけど、京次はもんどりうってひっくり返っていた。
扉がゆっくりと開き、雪之絵真紀が姿を現す。
私は後退る様に、雪之絵真紀から10mちょっと距離を空ける。
彼女は、まず私を見て、次に京次を見る。そしてその体が京次に向いた。当たり前、私なんてオマケにすぎない。この女はあくまで京次が目的。
でも、そうはいかない、ここからが勝負、
「聞きなさい!雪之絵真紀!」
私は声を張り上げた。雪之絵真紀が、面倒くさそうに視線を私に向ける。
「見る影もないわね!ま、いいわ、京次の体は上げる!どーせ、心は私の物なんだから!」
雪之絵真紀は変ったそぶりは見せない。これではダメ、もっと挑発しないと。
「あんた、何人傷つけたの!?いくら未成年ったって、ただじゃすまないわよね!!」
....まだまだ、
「私は、あんたが京次と遊んでいる間にとっとと逃げさせてもわうわ!そして、あんたが一人!牢獄で蹲っている間!あんたの京次を奪った私は!!」
...まだ、
「別の素敵な彼と!!素敵な恋をして!!幸せに生きるのよ!!」
....
「あんたの事は覚えておいて上げるわ!!私が素敵な彼の腕の中で暖かく過ごしている間!!そーいえば、今頃、暗い牢獄の中で、あの人は何やってるかしらぁ?なんて...
毎度毎度、哀れんであげるから!!!ありがたく思いなさい!!!」
来た!!やっと雪之絵真紀の目の色が変った!!
平和ボケしている私でも分かる凄まじい殺気、私は雪之絵真紀が動く前に背を向けて走り出した。
すぐに雪之絵真紀は私を追いかける。当たり前、あれだけ言われれば私だってそうする。
二人の距離10メートル、雪之絵真紀の足は速い。でも私も昔はやんちゃだったから、そう簡単には追いつけない、と思う。
私は廊下の端までやって来た。目の前には、登る階段と下る階段がある。迷う事なく登る階段を選んだ。
雪之絵真紀の後ろで、京次が信じられない物を見るような表情で私を見ていた。
きっと私が登る階段を選んだのを見て、私の考えを理解したのだと思う。
て言うか、解ってもらえると、うれしいかな。