クレイモア SS

エンディング

屋上へ通じる扉を開ける。途端に目の中に突き刺さる、太陽の光。

ここまで来れた。しかし、ぐずぐずしているヒマはない。私は屋上を取り囲む金網まで走り、その金網をよじ登った。こう言うのを”火事場の馬鹿力”と言うのだろうか、金網は私の背丈の二倍はあるが、簡単に乗り越える事が出来た。

金網の向こう側に降り立つ。しかし、すぐに屋上の縁と言うわけではない。金網から縁まで5メートル以上軽くある。認知症の人が誤って金網を乗り越えても、すぐには落ちないようにとの配慮だと聞いたが、定かではない。

私はそのまま進み、一段高くなっている縁の上に立ち、そこで振り返った。

後ろに一歩でも下がれば、30メートル下まで真っ逆さまだ。でも、これでいい。

私を追って来た雪之絵真紀は、ぽーん、とジャンプし、左手で金網の天辺を掴み、身をひるがえしてこっち側に降り立った。

あの金網をひとっ飛びだ。正直舌を巻く、あの京次が勝てないわけだ。

雪之絵真紀は赤い瞳で私に近づく。口元が笑っているのは獲物を追いつめた喜びのためか。

でもね、ホントは追いつめたのは私の方なのよ。

「さあ!来なさい!!雪之絵真紀!!!」

私は啖呵を切った。命をかけて、なんてケチな事は言わない。私は命を使って成功させて見せるから。

雪之絵真紀は、足元の埃を巻き上げて向かって来る。獣の牙である刃物を振り上げて。

でも、それは気にしなくていい。

たとえ首を掻き切られても、どこに突き立てられても、構う事はない。

私は、ただ、雪之絵真紀の体をしっかり捕まえて一歩後ろに下がる、それだけでいいのだ。

それだけの命の時間があればそれでいい。

それだけの時間なら、私にだって、きっとある。

きっとある、から、

だから....

バイバイ、京次


前へ、   エピローグへ、