雪之絵の中は、思わず仰け反ってしまうほど気持ちよかった。
物事全てに天才と言うものがあるならば、雪之絵は間違いなく、性の天才であった。
ドロドロとした甘く醜悪な快感が、俺の心に満てくる。俺の意志など関係ない、接続部分から流れ込む雪之絵の魅力が、俺の男の本能を犯すのだ。
魅力と認めざるおえまい、実際、雪之絵自身に負わされたトラウマがなければ、簡単に”落ちた”事だろう。
だが、落ちるわけにはいかない。落ちたら一生、雪之絵のペットだ。
「はあああ...」
深く息を吸って、吐いて、その後雪之絵は、俺の上で腰を振った。
俺は、ヒビが入るほど歯を食いしばる。そうしないとあっと言う間にイッてしまいそうだったからだ。
「あは、あははははははは、」
突然、雪之絵が笑い出した。何事かと見上げると、雪之絵の視線は、君寧明人等三人の方へ向けられていた。
君寧等三人は、「うーうー」唸りながら、床に顔を擦り付けている。俺と雪之絵の行為を聞くだけに耐えられず、なんとか目隠しを外そうと奮闘しているのだ。
しかし、雪之絵はその道のプロとも言うべき”縛り”の専門家だ。そう簡単には外せない。
半ば泣きながら蠢くその様は確かに笑えるが、その分哀れでもあった。
「...気持ちいいわ..、私の体、気持ちいいでしょ?奇麗で魅力的でしょう?」
「ああ、」
挑発する雪之絵、
「...私の事、好きよね?」
「嫌いだ。」
屈しない俺。
雪之絵は無言で、腰の動きを速めた。
まだ解っていない、俺の心を体で得る事は出来ないのだ。 とは言え、生理現象を止められないのも、又事実である。
「雪之絵! もうイきそうだ!離れろ!もうガマン出来ん!!」
「......」
雪之絵は、俺を見つめて言葉を聞いていたが、腰の振りは一向に止む様子は無い。
「中に出しちまうだろ!!早くどけ!!!」
「出していいわよ、膣へ。」
「え?」
一瞬、安全日と言うやつか?と思ったが、雪之絵はそんな甘いヤツじゃない。俺が一番よく知っている。
「もっとも今日、中出ししたら、十中八九、大当たりだけどね!あははははははは!!」
雪之絵の顔が禍禍しく歪む。そして、ピストン運動のスピードを、今までとは比較にならないほど上げた。
「馬鹿!!出来ちまって困んのはお前だろ!?」
「あはははは!!私は困んないわよ!出来ちゃったら京次が責任とるのよ!!あははははははは!!!」
本気だ。
地獄への門を開く快感が下半身に集中して行くのを感じた。
俺のモノが今にも爆発しそうに脈打っているのを、膣内で感じ取ったらしい雪之絵が、さらに腰の動きを加速する。
すさまじいスピードだ。俺のジャブより速いかも知れない。
気がふれた様に笑いつづけて腰を振る雪之絵は、俺を凝視して離さない。迫り来る絶頂に耐えるため歪む俺の顔を見てよろこんでいる。
昔と何も変わらない、”性欲の魔女”。一つだけ違うのは、あの頃よりも、今の方がはるかにピンチだと言うことだ。いや、あるいは一生最大の危機かも知れない。
俺は歯を食いしばって絶頂を耐える。無駄と解っていても耐えねばならない、この試練。
そして、俺はある事をひらめいた。こんな時の必殺技、小難しい数学の計算式を唱えるのだ。
「...一かけ一は一、一かけ二は二、 」 ...て、こんな簡単なのじゃだめじゃん!!
俺は自分の愚かさを呪った。そうなのだ、不良代名詞たるこの俺が、難しい計算式など覚えているはずがないのだ。
正直初めて、あの時勉強をしておけば良かったと後悔した。そして、人生に数学は必要である、と言う事も。
俺は、絶望的な眼差しで上下に動いている雪之絵を見つめる。青天井に 腰の動きを速めながら雪之絵は、虚ろな目で俺を見ながら笑っていた。