『何故だ!!』
『何故、弥生が殺されなければならない!?』
『...御緒史』
それは雪之絵弥生と付き合いはじめてから、幾度と無く聞かされて来た言葉。 御緒史は、その言葉を無視して、弥生の後ろに、鋭い視線を向けた。
『鳳仙!陸刀!! お前等も、弥生の呪いを一緒に解くって、約束したじゃないか!!』
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御緒史の叫びに、弥生の後ろに立つ鳳仙と陸刀の二人が俯いた。
保身や繁栄の為に、女の子を利用する愚行を良しとしない者達が、鳳仙や陸刀の中にも、ちゃんと居るのだ。
後々、桐子や加渓の父親となる彼等二人も、そんな一般常識を持った者達であり、これまで雪之絵の呪いを解くべく、御緒史や弥生と行動を共にして来た仲間だった。
『私が殺されなければ、真紀の中の呪いが動き始める。 そしたら、雪之絵だけじゃない、鳳仙も陸刀もオシマイなのよ。』
『彼等だって、決して私を殺したくて殺す訳じゃない。 殺されるなら彼等に、そう私が望んだんだもの。』
『待て!』
。
『だったら、あと一時間だけ待て! あと一時間の間に、何としても呪いを解く方法を見つけて来るから!!』
『...無理よ。』
『絶対待ってろ!! 呪いを解く方法を見つけて、一時間後に帰って来るから!!』
言ったと同時に、御緒史は、弥生に背を向けて走り出す。
『ま、待ってよ!!』
御緒史の突然の行動に驚いた弥生が手を伸ばすが、当然その手は届かなかった。
それでなくても視界の悪い闇夜の中、御緒史の背中はどんどん見えなくなって行く。
当然だ。 私と弥生と鳳仙と陸刀の四人で、何年も呪いを解く方法を探して、結局、見つけられなかったのだから。